昨日ご紹介した「モモちゃん」シリーズは、私が大人になって出会った児童書ですが、子供の頃に読んだ児童書で一番好きな本は?とたずねられたら、私は迷わずこの本を挙げます。
「ポケットの中の赤ちゃん」。宇野和子さんが書かれた本です。初版は1972年。
確か、毎年秋に行われる「読書感想文コンクール」の課題図書だったと思います。私が3年生か4年生の夏休みに読書感想文を書くために買ってもらったのが、この本との出会い。
ひとりっ子で弟か妹が欲しくて欲しくてたまらない、なつ子という幼稚園生の女の子がお母さんに「赤ちゃんが欲しい」とねだります。お母さんは「そうねえ、エプロンのポケットに入ってないかしら」と言って、ポケットをひっくりかえしてみますが、入っているのはレシートだったり、輪ゴムだったり。
お母さんがエプロンを置いて買い物に出かけている間に、あきらめきれないなつ子がもう一度、エプロンのポケットを探ってみると・・・
ポケットの底で何かがもぞもぞ動いているんです。
なんと、それは、なつ子の小ゆびのあたまくらいの裸ん坊の赤ちゃんだったのです。
それから、なつ子は赤ちゃんにミルクを飲ませ、オムツを作ってやり、ベッドを用意して・・・としている間に、赤ちゃんはどんどん大きくなって、あっという間になつ子の手のひらぐらいの大きさの女の子になってしまったのです。
女の子の名前はムー。
エプロンのポケットの中から出てきた小さい赤ちゃんのお世話をするところもワクワクするのですが、その後、ムーちゃんとなつ子は様々な冒険をするのです。これがもう、ワクワク、ドキドキ。
「大人に見られたら、消えちゃうの」というムーちゃんをおもちゃとだなにこっそり隠すなつ子。
夜になると、天井の電灯を扉にみたてて、不思議な世界に出かけます。
そこでお菓子をいっぱい食べたり、「死んだお話」を助けたり・・・ドキドキの冒険です。
ムーは不思議な力をもった女の子で、紙に書いた食べ物でも「これはほんものだ」と思えば、本物になって食べることができるのです。
なつ子も真似して「これはほんものだ、ほんものだ。おいしい、ほんもののクリームののった、ほんもののケーキだ。」と言い聞かせて食べてみますが、紙の味しかしません。思いこみが足りないそうです。
当時、小学生だった私は、このお話の部分に魅せられて、本当に本物になったらいいのに、と思っていました。
幼稚園児の我が娘・マーヤは「あのお話はウソだよ。マーヤ、やってみたけど、おいしくなかったもん」と、このあいだ言ってました。
やってみたのか、君は・・・(^^;)
双子にもこの本の読み聞かせをしてやっているのですが、二人が気に入っているお話は「とりこみや」と戦うところ。
小さい頃、おもちゃとか大切にしていた物が、ちゃんとしまっておいたのになくなることってありませんでした?それはね、「とりこみや」の仕業なんです。なつ子の家は床下深くに「とりこみや」が住んでいて、なつ子の大切にしていた物をあれこれと、とりこんでいたのです。
この話を読んで、当時小学生だった私は「うちにもきっと『とりこみや』がいるんだ」と思っていました。気が付いたらなくなっているってことが、時々ありましたもん。
小さい時しか経験できない、夢と現実がごっちゃになった不思議な体験や不思議な気持ちを思い出させる1冊です。
最後はね、お母さんに見られてしまって、ムーちゃん、消えてしまうんです。でもね、「きえないでいよう」と力いっぱいがんばって、小さなお人形になって残ったのです。
お人形を手のひらにのせて「これはほんものだ。これはほんものだ。ふっ。」と必死におまじないをかけるなつ子。もう私、号泣しましたよ。
たった3日間のできごとなんです。なのに、私の心の中に、もう30年以上もあざやかに生き続けているんですよ。
★ポケットの中の赤ちゃん★
当時の本が我が家にまだ残っています。ページは黄ばみはじめていますけど。さすがに一般の書店の店頭には置いていないのですが、アマゾンで探してみたところ、なーんと販売されていましたよ。さすがアマゾンです。
【Photo】このお魚も食べられるようになるかなぁ(海辺で魚のミイラを見つけたマーヤ)
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